仁清色絵菊波水指 にんせいいろえきくなみみずさし

仁清色絵菊波水指 にんせいいろえきくなみみずさし
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鶴田 純久の章 お話
仁清色絵菊波水指 にんせいいろえきくなみみずさし
仁清色絵菊波水指 にんせいいろえきくなみみずさし

日本陶芸史上の一巨峰とされる御室窯仁清の作。
仁清は本名野々村清右衛門、仁和寺門前に築窯し、宮方堂上貴顕の知遇と金森宗和の指導を受け、その典雅の作風をもって長く京焼の始祖に擬されています。
この水指は「龍田川水指」などとともに、仁清創出の色絵水指のすぐれた一種の型を示すもので、寸法適切、姿温柔、どうにもこれ以上動かせない上品な形にまとめています。
これに金銀五彩をもって菊に波を描き、上部大きく余白を残し、全体の賦彩と配置は巧妙をきわめ、高台内に大印「仁清」を捺します。
【付属物】箱―黒塗面取、金粉文字
【伝来】 藤田家
【寸法】 高さ:15.6 口径:9.9 胴径:17.5 底径:11.1 重さ:1020

色絵菊水図水指

色絵菊水図水指
色絵菊水図水指

Ninsei: water jar with bridge and willow design, enamelled wareHeight 14.8cm Yuki Museum of Art
高さ14.8cm 口径16.8cm 底径11.6cm
湯木美術館
 図19とほぼ同様の作行きですが、胴の張りがやや強いです。また口部から外側裾まわりにかけての白濁釉は 「色絵牡丹図水指」よりも薄く、貫入は細かいです。口まわりには蓮弁文をめぐらし、そのまわりには黒釉を施しています。肩から胸にかけては銀で垂幕のように源氏雲をあらわし、胴には赤と銀と金で橋をくっきりと描き、芽吹いた柳の樹を添えています。桃山時代以来、屏風などによくあらわされた柳橋の図をまるい水指の胴にあらわしたものですが、筆致はやや弱いです。
 背面には波濤文があらわされ、その銀の上絵具は酸化して釉膚に黒く滲んでいます。内部に薄くかかった釉は兎斑状を呈し、裾から底にかけては土見せで、底の左側中央にくっきりと「仁清」の大印が捺され、底の浅い削り込みもすっきりと仕上がっています。
 内箱の蓋裏には、仁清が丸亀におもむいて制作し、京極家に伝来したものですと、岡山藩家老伊木三猿斎が書き付けていますが、もちろんその間の消息は判然としません。おそらく他の茶壺などとともに、丸亀京極家の注文に応じたものなのでしょう。

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