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鶴田 純久の章 お話
赤茶碗 銘聖 022

高さ8.2cm 口径9.9cm 高台径6.0cm
 内箱蓋裏に「聖(花押)」と千宗旦が書き付け、その左横に「赤茶碗長次郎焼宗旦書付 宗室(花押)」と仙叟宗室が極め書し、外箱蓋裏に「聖茶碗 宗旦書付 添古宗室 左(花押)」と覚々斎原叟の極め書があり、さらに啼啄斎の添状が添っています。また茶碗の高台横に書した「聖」の朱漆書も宗旦筆とされています。古来「雁取」「小黒」「閑居」「一文字」「太郎坊」「横雲」とともに、長次郎外七種の一つにあげられた著名な茶碗ですが、図版で紹介されるのは初めてです。
宗且以来の伝来を今回は調査する時間を持ちませんでしたが、寛政年間には伊勢松坂の豪商長谷川家の蔵となっていたように思われます。
 長次郎焼の赤茶碗としては、他にほとんど例を見ない作行きですが、「杵ヲレ」「尼寺」など黒茶碗には共通のものがあります。しかし赤であるために見た目の趣はいささか異なります。腰が張り、口縁に起伏をつけ、抱え口とし、胴をおさえて胴締風にしています。高台はやや大振りで畳付が広く、高台際に箆を回し、見込には深く大きな茶溜りが削り込まれ、茶溜りの回りと高台畳付に、目跡が五つずつ残っています。総体に失透性の白釉が厚くかかり、気泡が多く散在した独特の釉膚をなし、胴の一方に裾から口部にかけて大きく破損したところを漆繕いしています。

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