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鶴田 純久の章 お話
赤茶碗 銘白鷺 015

高さ8.9cm 口径9.9cm 高台径4.9cm
 内箱蓋表に「白鷺 長次郎焼」、蓋裏に「面白やうつすかりなも身につめは 鳥の羽音の立につけても 宗室(花押)」と歌をしたためているのは仙叟宗室です。添っている不休斎常叟筆の二通の消息によると、この茶碗の書付を仙叟に書いてもらうべく、千宗安と名のっていた時代の常叟が依頼を受けていたことがうかがわれますが、この茶碗が伊予松山の久松家に伝わったことから推測して、すでに常叟が久松家に仕えていた頃のことらしいです。外箱には不見斎と玄々斎が書き付けています。
 土味、柚膚、高台などの様子は「一文字」「無一物」と一連共通のもので、長次郎焼赤茶碗としては古格をもつものといえます。しかし、この茶碗の器形は他の二碗とかなり異なり、腰のまるいやや小振りの茶碗で、まことに素朴な愛らしい姿に作られています。だが「無一物」と似て底は分厚く、高台内に緩やかな兜巾が削り出され、畳付に目跡が五つ残り、釉がかりは「無一物」より厚く、「一文字」とよく似た白いかせ膚となり、一部薄緑に火変りしています。従来はほとんど知られていなかったが、「楽焼名物茶碗集」にあげられていたと記憶しています。

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