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鶴田 純久の章 お話
秋の夜 あきのよ
秋の夜 あきのよ

中興名物。
高取焼茶入。
『伊勢物語』の歌「秋の夜の千夜を一夜になずらへて八千代し寝ばや飽く時のあらむ」の意味をとり、尽きることのない妙味を讃えた銘であります。
相対する遠山形の双耳の一方から黒ずんだ釉がなだれ掛かり、そのかたわらに飴色釉の一なだれがあり、胴体は全部梨皮色の釉が掛かり非常に落ち着いた趣があります。
もと小笠原佐渡守が所有し、のち黒田家に伝わり、さらに大阪の藤田伝三郎を経て井上世外に伝わり、1925年(大正一四)の同家の売立の際に同じ手の染川と共に二万一千円でありました。
(『古今名物類聚』『大正名器鑑』)

あきのよ 秋の夜

高取焼茶入。
中興名物。
銘の由来は『伊勢物語』の「秋の夜の千代を一夜になぞらへて八千代し寝ばや飽く時のあらむ」の歌意に因んで名付けられました。
筑前福岡藩主黒田侯のもとで、同じく高取焼の「染川」(189~頁)と一対にして箱に収められて伝わりました。
口縁の捻り返しはやや深く、遠山形の耳の付いた非常に整った品格の高い茶入です。
肩周りに飴色釉が暖簾のようにかかり、見所の一つである遠山形の耳の一方になだれがあり、これと少し離れたところには飴色釉のなだれがあります。
胴の全体に梨皮泥色の釉がかかり、裾より下は朱泥色の土がみえます。
この変化のある釉がけの面白さも見所の一つとなっています。
底の糸切は細かく鮮明で、その起点に少し食い違いがあります。
総体に遠州好みと伝えられるにふさわしい茶入です。
この茶入と「染川」の二つの高取焼茶入は、寂寞の秋夜の想いと絢爛の春色とを並び称すべく、一対にして遠州が名物の選に入れたものでしょう。
「染川」とともに諸名物記に記載されていますが、『諸家名器集』によると江月和尚の「秋夜記」が添っていたことがわかります。
【付属】蓋四 仕覆五、白地小牡丹古金欄・三雲屋緞子・清水裂・望月間道・茶地大黒屋金襴(図版右より) 内箱―桐白木、銀粉字形 外箱 春慶塗、縁沃懸け藤鳥の蒔絵、金粉字形 添巻物 小堀遠州筆添巻物箱 桐白木書付
【伝来】黒田家―藤田伝三郎 井上世外
【寸法】 高さ:9.3 口径:3.6 胴径:6.3 底径:3.9 重さ:95

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