Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

薩摩焼茶入。
中興名物。
薩摩守忠度の名が知名であることから、薩摩焼であるこの茶人に「忠度」と付けたもので、命銘は『名物目利聞書』によれば細川三斎とあり、内箱書付も三斎の筆と推察されます。
もと江戸深川の豪冬木小平次の所持で、時を経て信州上田城主松平伊賀守の有となり、さらに赤星家に移って、大正六年十月同家第二回入札の節、野村家に納められました。
茶入は薩摩焼としては珍しく正しい肩衝形で、口造りはほどよく、捻り返しも正常です。
肩は直角ながら角がわずかに丸みをみせ、胴はほぼ直立し底近くですぼんでいます。
その釉景もなかなか多彩で、総体に青茶釉の中に渋紙色をまじえ、肩のあたりに黒釉がむらむらとかかっていて、さらに肩先から白青釉が一条流れ下がって裾にまで及び、釉際に至って止まり見事な置形をなしています。
以下は朱泥土を現わし、ところどころ切り箆をみせ、畳付は糸切底となっています。
『古今名物類聚』『鳳亀龍』などの名物記のほか『赤星家蔵品目録』にも記載されています。
薩摩焼茶入の名物はこのほか「後藤」「甫十」「亀尾」などが知られています。
【付属物】蓋仕覆―二、鎌倉間道・松島裂(図版右より) 仕覆箱―二、桐・書付松平伊賀守筆、一閑張・書付同筆 挽家 鉄刀木 内箱 桐黒掻合塗、朱塗書付細川三斎筆 外箱 黒一閑張、朱漆書付松平伊賀守筆
【伝来】冬木小平次―松平伊賀守 赤星家 野村家
【寸法】 高さ:9.2 口径:3.3径6.4 重さ:175

忠度 ただのり

忠度 ただのり
忠度 ただのり

中興名物。国焼茶入、薩摩焼。薩摩守の名に因んで忠度と名付けたのであろう。『名物目利聞書』によれば細川三斎の銘とあり、内箱の蓋表の朱書付忠度の二字は三斎の筆蹟である。肩衝茶入で全体無、作行・釉色・景色ともに具備して薩摩窯の代表的茶入である。釉質は青飴・渋色・蛇蝎釉その他茶・黒・草色などさまざまに錯綜している。もと江戸の豪商冬木小平次所持、信濃国上田藩主松平伊賀守、赤星家を経て大阪の野村家に入った。1917年(大正六)赤星家売立の際三万六千九百円であった。(『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』)

前に戻る
Facebook
Twitter
Email