歴代名磁図譜 れきだいめいじずふ

marusankakusikaku
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鶴田 純久の章 お話

書名。項子京が自ら秘蔵、見聞した貴重な窯器を画工に写生させこれに解説を付けたものです。
項子京は名を元汁といい、墨林居士と号し、中国嘉興(浙江省)の人。
明の1525年(嘉靖四)に生まれ、1590年(万暦一八)没しました。
父祖の遺産を継いで巨富を擁し法書名画の蒐集にふけりました。
その蒐集は古今に冠絶するといわれます。
ブ。
シェルは北京在住当時偶然この書を入手し、英訳を付して1908年ロンドンで刊行しました。
現在では既に稀哉に属します。
その後北京で異本を基に中国人某がこれを刊行、その内容はほとんどブアソエル版に等しいです。
ただ後者は、本書が必ずしも項子京の手によって完成したものではなく、項子京死後の他の増補の事実を考証しているなど参考とすべき点もあります。
本書に載った窯器は次の通り。
宋の窯器-汝窯三点、定窯(白)六点(紫)五点(黒)一点、宋官窯十点、脊窯一点、竜泉窯十一点、東窯一点、均窯四点。
明の窯器-永楽窯六点、宣徳窯十五点、成化窯十一点、弘治窯四点、正徳窯二点、宜興窯二点。
これらはみな艶麗な彩色版を付しており、おおむね銅器の形を模しているものが多く、そうでないものも複雑巧緻な形のものが少なくないようです。
その彩色の艶美なこととあいまって、果たしてこの実物が存在するか否か疑わしいものも少なくないようです。
けれども色彩などは転写印刷の限り莫実に程遠いものもあるでしょうが、その形状に至ってはほぼ真実を伝えていると見ることができます。
要するに明の万暦(1573-1620)頃鑑賞家が賞美した窯器がどのようなものであったかを知る有力な資料として重視すべきものであります。
(尾崎洵盛)

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