結髪の際に水を入れておく楕円形の小器。洗面盥鬢盥ともいう。『甲子夜話』に「水の鬢つけ油ともの幼少の頃はなく夢を水に漬し其汁にて結り、このこと貴人許にてなく部屋方婢迄皆然り、因貴上には蔓竪、鬢水入とて育て蔓立には五倍子の茎を截て立て鬢水入には水を入れ、茎に潰して櫛を入れこれにて髪を梳るなり、故に貴上の品は黒漆に金銀の蒔絵にし、卑下のは竹筒に浅ましき陶器の水入にて、婢女も必この品を持り、今は絶其品を見ることさへ無く稀には蒔絵のもの抔骨董肆に見るのみ」とある。櫛を入れるので、それに応じた大きさの細長い楕円形のものである。美濃久尻(岐阜県土岐市泉町久尻)の清安寺裏の窯で多く焼いていた。