Ash glaze pottery horizontal jar. Excavated from SE311B Area on the ruins of Heijō Imperial Palace, Nara-shi, Nara. 8th century. Diameter 9.1cm.Nara National Research Institute of Cultural Properties.奈良市佐紀町平城宮跡SE311B区出土
8世紀
高さ5.7cm 口径3.3cm 胴径9.1cm 底径5.5cm
奈良国立文化財研究所
平瓶は6世紀末ごろ出現し、11世紀代までつくられた長い歴史をもつ器形の一つです。胴上面の周縁に寄って口頸がつけられていることからみて、液体容器として用いられたものであることがあきらかです。小形の平瓶が筆墨のための水滴として用いられた場合のあることは、硯に伴って出土した例から知られます。本器は胴側面に四字、底裏に一字墨書があり、文字そのものは充分判読できない。
が、側面四字のうち、三字は同一文字の反復です。つれづれなるままの習作でしょうか。必ずしも小形品とはいい難いこの平瓶もまた水滴として用いられたものでしょうか。本器は典型的な猿投窯の作品であり、把手および胴上面に濃緑の灰釉がたっぷりかかっています。底の小さい、扁平な胴の形や高台の張りからみて、8世紀末ごろの作品です。尾張の調貢瓷器として、中央に運ばれたことを示すこよなき例です。