猪口・鍾口 チョク

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鶴田 純久の章 お話

膳部に用いる陶製の小さく深い器。
また陶製の酒盃で形は小さく上が開き下が狭まったものです。
猪口は当て字で鍾の字の大声の呉音を写したものといわれ、また朝鮮の鍾除(朝鮮音チョンク)の転誰ともいいます。
鍾の字は古くからみられますが、チョクは寛文(二〈六一-73)の『後撰夷曲集』が初見のようであります。
初めは膳部に用いて和醤・塩辛などを盛ったものを猪口といったらしく、小酒盃を猪口というようになったのはその後のことのようであります。
蕎麦猪口などのように汁入れに用いられるものもあります。
食器としての猪口は、薩摩の方言でノゾキというように深形のもので、肥前伊万里の染付物が最も普及しました。
それらの高台は輪高台の外輪を除くすべてに釉を掛けたのと、目鏡底と称して底足内の土を露出させたのとの二種がありますが、目鏡底はややのちのものであるでしょう。
多数を要する雑器なので文様は種々ありますが、いずれも素朴勁健の味わいがあります。
酒盃としての猪口については盃の項を参照。
(『後撰夷曲集』『南留別志』『和漢三才図会』『東雅』『塩尻』『嬉遊笑覧』『朝鮮陶磁名考』)

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