唐津向付造り 牛篦使用

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鶴田 純久

唐津の牛篦で向付を造る

この牛箆(ギュウベラ:牛の舌のようなヘラ)一つで色々な形の向付けが製作可能です。古唐津の向付け、特に茶道の懐石に使われたり織部好みだったりする唐津向付はこの様に作られたと言って過言では無いようです。

◇牛篦で土を延ばす

牛篦で土を延ばす

ここまでの工程は碗や皿・鉢などと殆ど変わらない。クリーム状の泥漿をヘラに付け滑るように土を伸ばしていく。その後泥漿が器に残らないようにするのがコツです。

◇土を締めながら見込み内を形作り

土を締めながら見込み内を形作り

見込み内を中心に土を締めながら形を作っていきます。クリーム状の泥漿や水分をヘラの表面や土の表面に付けないようにします。出来る限り土を締めるには摩擦があった方が良いようです。

◇見込み内と立ち上がりの段差付け

見込み内と立ち上がりの段差付け

見込み内の鏡付けと立ち上がりの段差を牛篦先端の腹と角の部分を利用して形成します。牛篦の角を当ててヘラを持っていない方の指で内側に押し込むようにします。

◇牛篦先端の腹で広縁の成形

牛篦先端の腹で広縁の成形

立ち上がりの広縁を牛篦先端の腹を使って成形します。ここも摩擦を利用し押し込むように締めながら成形します。締めながらをしっかりやると乾燥時に形が崩れないようになります。勿論口縁部の締めも大事です。

◇見込みの土の締め

見込みの土の締め

牛篦最後の土の締めは見込みの中心を行います。これは高台の中心が切れるのを防ぐために行いますが、その形跡が中国や朝鮮の陶磁器などで見かける「鏡」と言われるものや日本の茶道の茶碗などで「茶だまり」と言われるもののようです。

◇口縁部を変形させる

口縁部を変形させる

最後に口縁部を変形させ変形向付けを仕上げます。桃山茶陶の志野や織部、唐津や古染付などこの様な変形向付けが流行っていました。共通して言えるのは見込み内を鏡にして段差を付けて広縁を立ち上げ変形させて向付けにしています。
懐石盆には真円や紋丸では入りづらく同じ容量でも変形させた方が良いとの知恵だと思います。

この技法は古唐津の古いもの特に岸岳系には少なく織部好みが流通し始めた多久・松浦・武雄系の唐津に多く見られます。また、初期伊万里時代にも見受けられますが土造りが安定し始めると、押し型に成形した器をかぶせて高台を叩いて締めて土の切れを無くす方法を使い始めたため、この牛篦の使い方は姿を消したようです。
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