広沢手 ひろさわで

広沢手 ひろさわで
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鶴田 純久の章 お話

金華山茶入の一手。
銘広沢を本歌とします。
この手に属する有名なもので現存するものには春雨・呉竹・松蔭があるようで、存滅不明のものに秋月・秋夜・如月・伏見などがあります。
土は赤色でありますが、土器色の柔らかい土で、よく焼けて硬い土が少し黒味を帯びたものもあります。
糸切は細く華奢なもので、糸切が見えないものもあります。
口造りの捻り返しは見事な細工であります。
下釉は濃柿色に梨地があるようで、釉に小砂が混じったように見え、これを沙羅釉と呼び、広沢手の約束の釉であります。
上なだれは黒く、濃墨のような光があります。
薄柿色の黒味がかった下釉に黒い上釉をむらむらと掛けたものがあります。
この手の茶入の姿は口が少し延び、肩を衝き、裾が張り、盆透しがあるようで、図のように格好のよいものであります。
この形態を広沢体といい、無類の上作物であります。
口に疵のないものはまれで、道具巧者のいうようにこの手の疵は少しも苦にならないようです。
一説に文明(1469-87)の頃久野某が焼いたものだといいます。
(『別所吉兵衛一子相伝書』『茶器弁玉集』『万宝全書』『茶道名物考』)

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