大名物。
朝日春慶、肩衝茶入。
奈良木津屋の旧蔵であったための銘であるでしょう。
総体に柿金気釉の上に黒金気釉がむらむらと掛かり、肩から胴にかけて黄釉の丸星または飛雲のような景色が所々に現われ、胴の沈筋にかけて縦に二センチ前後の踊箆があります。
形状・釉色共に淀肩衝に非常によく類似しています。
前田利常が奈良木津屋から故郷肩衝を求めた際一緒に同家に入ったものでしょうか。
『寛政重修諸家譜』に、1702年(元禄一五)4月26日、将軍綱吉が加賀藩邸に来臨した際にこれを献上したとあります。
後年深川の富商鹿島清兵衛に伝わり同家六宝物の一つとなり、1904年(明治三七)大阪鴻池家、1907年(同四〇)井上家と転じました。
(『松屋日記』『東山御物内別帳』『古名物記』『寛政重修諸家譜』『古今名物類聚』『大正名器鑑』)