肥前国(佐賀県)小城郡岩松村の磁器。松香渓焼ま松谷焼・松香焼ともいう。天和年間(1681~14)に同村松香渓と呼ばれる地に小城藩主の別邸が建築されると、これの御庭焼として開かれたものである。記録によれば1699年(元禄一二)に南川原の焼物師松井兵右衛門、有田焼物師酒井田藤九郎の名もみえ、さらに1726年(享保一一)には直接藩の事業に移管された。その製品は肥前諸窯中の優良品で大川内磁器に類似し、白磁染付、または青磁、まれには色絵のものをも出した。廃窯の時期については、藩主六代の治世である1747年(延享四)までの記録があるので、その後しばらくしての廃絶であろう。(『工芸志料』『陶器類集』『彩壺会講演録』『有田磁業史』『茶わん』四八)