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鶴田 純久の章 お話

磁器原料として陶石はわが国では古くから重要なもので、現在でも主要原料となっています。
衛生陶器・タイル・硬質陶器などの原料としても欠くことのできないものであります。
石英粗面岩という火山岩が熱水作用を受けその中の長石などが粘土化し、同時に亜硫酸ガスなどの作用で鉄化合物が洗い流されて、磁器の原料として好都合となったのが陶石といわれるものであります。
しかしこのような石をそのまま微粉砕しただけでは石英の量が多すぎて成形が困難ですので、石英粒の間を埋めている粘土をできるだけ多く取るような粉砕処理を行い、水簸してこまかい粘土の多い部分を集めて坏土とします。
工業的には陶石を全部微粉砕し、可塑性粘土を加えて坏土としています。
現在わが国で最も広く用いられている磁器の原料は天草陶石であります。
この陶石は石英・絹雲母および少量のカオリナイトから成り立ち、ところによっては水酸化鉄の薄い皮膜で褐色になっていたり、また内部へ浸み込んでいたりして、この酸化鉄の量によって等級が付けられています。
天草陶石の組成をみるとそれ自体磁器素地の組成になっていて、絹雲母とカオリンとの量が三〇パ一セント内外もあるので成形も比較的簡単にできることが理解されます。
なお衛生陶器の原料に使われている代表的な陶石は石川県の服部陶石で、緑色凝灰岩が熱水作用を受けて変質したものであります。
この陶石は酸化チタンと酸化鉄とをかなり含有しているため還元焼成すると鼠灰色となりますので、酸化焼成を行う半磁器や硬質陶器素地原料として使用されています。
わが国の磁器を語る時に忘れてならないのが有田焼と九谷焼でありますが、いずれもその地方に産出する石英粗面岩の熱水作用を受けて変質した陶石を原料としています。
有田焼の原料である泉山石は石英・長石・絹雲母からできており、磁石・青磁石および釉石に大別されています。
素地原料には磁石を使用し、表面が鉄鋳色をしていて緻密な青磁石は焼成すると青色となりますので、これは青磁釉原料となります。
釉石は白色硬質アルカリ成分に富んでいるので釉原料に使われます。
九谷焼の原料である陶石は、産地によって花坂石・正蓮寺石・鶴の山石・五国寺石などの名称で呼ばれています。
近年岐阜県下の神岡地区・清見地区などで多量の陶石が産出されるようになり、それぞれの性質に応じてタイル・半磁器・白色硬質磁器の原料として使用され、従来の美濃焼の品質向上に役立っています。
(『工芸用陶磁器』『釉とその顔料』『岐陶試報告』)

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