書名。
黒川真頼著(ただし一部分若干の共著者がいる)。
宮内省博物館蔵版。
1878年(明治一一)11月26日出版。
内容は七巻に分かれわが国諸工芸の沿革を記したものです。
その巻三は陶工で、総説の部には黒川真頼の署名があるようで、古代より安土・桃山時代に至るわが国陶業の沿革が記され、続いて黒川真頼・古筆了仲の連名で各地諸窯の沿革が歴述されています。
著者の自序によりますと、この書は1878年のフランス博覧会に際し、わが国諸工芸の沿革を詳かにして出品と共にこれを供するため、官命によって前年の9月に筆を起こし12月下旬に脱稿したものといいます。
このように短期間につくられたものでありますが、正史については国学者の黒川真頼の考証があるようで、骨董方面については累代の鑑定家古筆了仲の助力があるようで、また官版であることもあって大いに諸書に引用され、近年までわが国陶磁史に関する諸説は、おおむね本書と1885年(同一八)調査の官報『府県陶器沿革陶工伝統誌』とを基にしているといっても過言ではないようであります。