タイの王侯貴族らに愛好された加彩磁器で、その文様はいかにもタイ式であるが、中国よりの輸入品である。ダムロン親王の説によれば、ベンチャロンはチュチャ王朝のラタナコーシン三世以前にはタイに入っていなかったということなので、清朝の雍正より乾隆・嘉慶・道光咸豊(1723~1861)頃にかけて最も盛んに輸入されたようである。タイの貴族が中国商人に命じてタイ意匠を描かせたり、あるいは王族らがタイの画工に同国の伝奇小説『ラーマ・ヤーナー』などの模様を描かせ、中国景徳鎮あたりで製造させて輸入したものである。花模様・菩薩模様・火焰模様などが多く、顔料の発色は極めて鮮明である。器物中最も多いのは大形朝顔形の茶碗と八ツ花形の高香合形の化粧壺などで、すべてきらびやかな高肉の上絵を白磁上に付けたものでタイ的色彩が強く、一見非常に美しいが雅味に乏しい。