Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話
ミナイ手 白地多彩騎士文鉢
ミナイ手 白地多彩騎士文鉢

十二世紀中頃から十三世紀の中頃までペルシアでつくられた多彩な文様で飾った陶器。低温度で熔ける酸化鉛を溶剤とし、鉄・マンガン・錫・銅などで発色させるエナメルを用いてガラス器に文様を描いて焼き付ける技法は、シリアで発達した。
このエナメル技法が陶器に応用され、同時にペルシアの細密画の手法と結び付いて生まれたもの。
デザインは多く細密画に採り、両者のテーマが一致するものさえある。色は七色を用いるのを標準とする。人物・群像・樹木・草花などがパターンとして多く使われ、伝統的な説話の場面を描いたものもある。この技法はやがて西方に伝えられて、マジョリカやイスパノ・モレスクといわれる彩画陶器を生むと共に、ヨーロッパの銅を地とす七宝となり、それが再び中国に輸入されて清朝の磁器をエナメルで彩った軟彩器を生んだ。主な産地はカシャーン、レイ、サーベなどであるが、その筆法には地方的な特色がある程度みられる。
例えばカシャーンの場合は、女性を描く時一般に丸顔で豊頰、顎も丸く中国的な印象を与えるものさえある。これに対しレイは顎がとがって丸顔にならない。また髪を豊かに強調するのもレイであある。男子の場合も同様にカシャーンは顎が丸く、レイはとがったり角張ったりして描かれる。サーベはその中間である。馬もよくパターンに用いられるが、カシャーンは堂々とした馬でありレイの画工はあっさりと軽快に描いている。(Pope,A.U.『ASurveyofPersianArt』)

前に戻る
Facebook
Twitter
Email