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鶴田 純久の章 お話
灰釉 多口瓶
灰釉 多口瓶

Ash glaze pottery: jar with multiple spouts. Excavated from Kurozasa No.36 Ceramic Kiln, Miyoshi-machi, Aichi. 8th century. Height 21.5cm.Registered as Important Cultural Property. Honda Collection.
愛知県みよし市大字莇生黒笹36号窯出土
8世紀
高さ21.5cm 口径6.5cm 胴径16.0cm 底径9.2cm
重要文化財
本多コレクション
 長頸瓶を基本とし、肩に四箇の注口を付した珍しい器形で、猿投窯の初期灰釉陶器の代表的作品です。多嘴壺もしくは多口瓶と呼んでいますが、中国陶磁に数多い多嘴壺とは関係がなさそうです。
 越州窯に多く見られる多嘴壺は北宋代に盛行したものであり、唐代にさかのぼる例をみません。本器はその様式からみて8世紀後半代ごろのものです。したがって、古墳時代以来の子持装飾須恵器の伝統をひくものと解すべきでしょう。
 肩の注口は浄瓶のそれと似ており、仏器の一種としてつくられたものと考えられます。シャープな水挽き轆轤とを用いた見事な成形を示しており、日本の陶磁史上最高の轆轤技術を展開した時期の作品です。口頸部に黒斑があり、肩から胴の一部にかけて緑色の灰釉がかかっています。この灰釉が人工釉か自然釉か議論を呼ぶ点でああるが、猿投窯ではすでに8世紀後半代から意識的に自然降灰を施す技法が始まっており、その釉調からみて本器もまた人工的に灰釉を施したものとみるべきでしょう。

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