熊本県荒尾市の小岱山山麓一帯に分布する須恵器窯跡群。
熊本県の最北部に位置する荒尾市は、西方に有明海を臨み東方には標高500メートルの小岱山の山並みを控えています。
小岱山麓はなだらかな丘陵性の台地となり、大小無数の谷が複雑に入り組んで窯業生産に好適な条件を形成しています。
荒尾古窯址群は須恵器窯を主体とし一部に瓦窯址を含みますが、これまでに数十基の窯が確認されており、その分布は小代窯址支群および袴嶽窯址支群の二つに大別されます。
この古窯址群の存続期間は古墳時代から奈良・平安時代にわたるとされていますが、その年代をさらに厳密に限定するには今後の研究に待たねばならないようです。
荒尾古窯址群の最盛期は奈良・平安時代でありますが、平安末期になると生産規模は著しく縮小し、わずかに軟質の瓦器類の生産だけが行われるようになりました。
なお荒尾古窯址群の所在する小岱山麓一帯は中・近世にも窯業が行われており、近世初頭に始まる小代焼(竜原焼・五徳焼・松風焼などとも呼ばれる)の存在はよく知られています。
肥後地方にはこの荒尾古窯址群のほかに、熊本古窯址群・下益城古窯址群・八代古窯址群・球磨古窯址群・宇土古窯址群などの比較的小規模な須恵器窯址群がありますが、これらの窯址群の所在地ではいずれも近世になって窯業生産が復活していることは注目されます。