石膏型に泥漿を鋳込んでつくる成形法。わが国では1873年(明治六)に納富介次郎・河原忠次郎らがヨーロッパで学んでこれを業者間に伝授しましたが、便利なその特質を会得するまでには至らなかったようです。1903年(同三六)に日本陶器合名会社がアメリカから四段仕様法を導入してから、同社を中心に一般にも広まった。石膏型の吸水性を利用したもので、泥漿を型の中に注ぎ入れ、一定時間経って型に接した素地の厚みが適当になった頃を見はからい、型を逆さにして余分の泥漿を流し出し、石膏型に付着した素地が硬くなり型との間に隙間ができたら取り出す方法と、むくの棒や板を成形する場合のように、余分の泥漿を流し出さずに水分だけを石膏型に吸収させて素地を硬くして脱型する方法とがあります。前者を排泥鋳込成形、後者を固形鋳込成形といっています。排泥鋳込は轆轤成形ではどうしても不可能な多角形の器物、あるいは極めて薄手の食器類や彫像などの成形に応用されており、石膏型さえあれば成形は最も簡単で、熟練は必要でなく誰にでも成形ができる。鋳込成形に用います泥漿は水量をできるだけ少なくし、しかも流れやすくするために水ガラスや炭酸ソーダなどの鮮膠剤を用います。土瓶や徳利のように口の狭まったもの、あるいは外面に凹凸模様のあるものは、一体になった型では鋳込はできもこれを型から取り出すことはできない。そこでこのようなものは、割型といって底が一個、胴が二つか三つに割れたものを組み立て、バンドで締めておき、鋳込んだあとこれをはずして品物を取り出す。彫像のような複雑なものは数十片の割型を組み立てて頭部・胴部・手や足の部分を別々に鋳込み、あとで各部分を濃い泥漿で接ぎ合わせ完全な形にする。(『工芸用陶磁器』)※かとうしゅんこう