

繊細華麗な陶磁器「明治伊万里」。数々の名器に宿る、陶工たちの果てなき熱意や、国家や世界が交わった物語を知ることで、より一層その魅力を堪能できる。
海を渡り、自らの足で名器たちの歴史を目にした筆者が、明治伊万里の趣を余すことなく解説。より多く陶磁器のフルカラー写真も盛り込み、増補改訂版として復刊。
明治伊万里の軌跡を辿りながら、優美な陶磁器の姿を鑑賞することができる一冊。
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明治伊万里の物語: 世界を魅了した様式美より
『幻の明治伊万里 悲劇の精磁会社』を、二〇〇六年に日本経済新聞社から刊行したが、すでに絶版となっている。
このたび、大学時代の先輩であるジャーナリストの東茂由さんから「貴重な本なので、改めて電子書籍などで刊行したらどうだろうか」という提案をいただいた。たしかに、言われてみればそうだと思い、掲載する写真を追加したり差し替えたりして、電子書籍を刊行することにした。
東茂由さんの紹介で、三和書籍から電子書籍を刊行することになった。 編集作業を行っているうちに、三和書籍の高橋考社長から、「紙の本も刊行したほうがいいのではないか」というアドバイスをいただき、勧めに応じて電子書籍と紙の本を刊行することになった。
書名にある「明治伊万里」とは私の造語であるが、文字通り明治期に造られた有田焼を指す。
特筆するのは、明治期に製造された有田焼の中でも、殖産興業のために輸出された有田焼を独立した様式美として評価したことである。有田は江戸期、文政一一年(一八二七)に大火に見舞われ、蓄積された技術や様式、人材が失われ、生産や品質の劣化に陥った。
しかし四〇年後、復活のきっかけになったのは慶応三年(一八六七)のパリ万国博覧会だった。ジャポニスムのブームも追い風になり、以降約十年間は日本の伝統的な工芸品が有力な輸出品として脚光を浴びた。明治新政府は外貨を獲得するために、万国博覧会へ出品して輸出振興を図った。万博に出品することは、世界の市場での競争にさらされ、有田焼の品質の向上にもつながった。 図案の改良改善も行われ、古代の仏教美術等を工芸用にアレンジしたものが考案され品格を増していった。また、窯や原料が創意工夫され、製造そのものも近代化されて洗練度を増し、やがて幾度となく開催された万国博覧会で西洋の名窯を凌駕するまでになった。伝統美術に固執するだけでなく、アール・ヌーヴォーなど西洋の様式と融合するような製品も生まれ、明治期の固有の様式美が確立された。
明治伊万里は初期、中期、後期と変遷していく過程で、技術や様式美が海外との交流によって進化していき、近代の窯業史に燦然と輝く足跡を残した。
明治伊万里の主産地である有田町で生まれて、現在も有田町で陶磁器に関わっている私にとって、明治伊万里を紹介することは使命であるともいえる。蒲地 孝典



