塩化金溶液に塩化第一錫と塩化第二錫の混合溶液を加えて得る紫絵具。
ツイグモンディの研究によるとこれは膠状金と膠状錫との吸着物で、両膠状液を混合すると容易に得られるものであります。
十七世紀にドイツの医師カシアスが発明したのでこの名があります。
カシアス紫の製法は次の通り。
金1を10の王水に溶解し2100の水中に注ぎ十分にこれを混合します。
次にこれに粒状錫6を30の王水に溶解したものを添加して十分間攬絆し、さらに熱湯2000を加えて攬絆を続けたのち数時間放置します。
このようにして生じた紫色沈殿物を水簸し半ば乾燥してカシアス紫を得ます。
この色相は金対錫の比率によって異なり、1対10は栗色。
1対5は薔薇色、1対4は薄紫色を示します。
金の比率を増すに従って褐色を帯びるのは膠状金の凝固に基づくものであります。
塩化銀あるいは炭酸銀を添加すると赤色になります。
カシアス紫を摂氏800度以上に加熱すると補色するが、これに白色素地土を混合したものはゼ一ゲル錐15番まで不変であります。
カシアス紫を上絵具に用いる場合には熔媒を必要とします。
(『工芸用陶磁器』)