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鶴田 純久の章 お話

Atsumi ware: three-handled jar with reed and heron design. 12th century. Height 39.3cm. Registered as Important Cultural Property.
Aichi Prefectural Ceramic Museum.
12世紀
高さ39.3cm 口径16.5cm 胴径34.0cm 底径13.5cm
重要文化財
愛知県陶磁資料館
 短い、外反する口頸部をもった大形の壺で、胴のふくらみの大きいなで肩の形態をしています。肩に二本の粘土紐を合わせた縦耳を三方に付けていて、耳の上下にそれぞれ菊座を設けた入念な作行を示しています。秋草文壺と同様、砂質に富んだ灰黄色の粗い素地で、紐土巻き上げ後、外面を木型で叩き締めた圧痕がそのまま残されていて、口縁形態とともに渥美特有の成形技法を示しています。焼成はきわめて良く、暗褐色の器肌の肩に暗緑色の灰釉がかかっています。
 文様は耳を基軸にして三方に展開しています。まず、基本になる構図は三筋文系のうちの蓮弁文です。肩の上下に幅の広い二条の平行沈線を引き、全体を三分割しています。そのうちの二面は平行沈線を襷がけにし、その交点に太い沈線で放射状に花弁を描いて、菊花文風の文様を表現しています。また、交叉する二重沈線の基点と菊花文との間に半切の菊花文を描いています。しかし、この二重沈線を仔細にみますと、上段は耳の付け根から始まっているのに対して、下段は縦線に届かず、内側に引き下しています。このような図形は渥美窯産の蓮弁文に数多くみられるところであって、各耳を頂点として描くべき一面の下垂線を省略して画面を用意しているのです。そこにはまず、太い施文具を用いて中央に洲浜を置き、その上に二羽の羽を休める鳥を、右側には羽を大きく広げて水面から飛び立つ二羽の鳥を描いています。また、左辺は縦線の根元から中央の鳥に向けてしなやかに延びる二本の葦を描いています。この四羽の鳥については頭をもたげて飛ぶ姿から鷺と考えられていますが、定かではありません。表現は太い線を巧みにこなしていて、流麗な絵を描き出しています。水辺の風景を描いた一幅の絵画です。

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