黒印尽茶碗 銘入舟 慶入

黒印尽茶碗 銘入舟 慶入
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鶴田 純久の章 お話

Keinyū (Raku XI, 1817-1902): tea bowl with design of stamp marks, known as “Irifune”, Black Raku
Mouth diameter 7.6 11.5cm
高さ7.9cm 口径7.6~11.5cm 高台径5.1cm
 楽茶碗の共箱としては異例の、板目の上質の桐を用いています。蓋表に「印尽黒茶碗」 とあり、蓋裏に「銘入舟 (花押)」 と碌々斎が書き付けています。箱の底裏に 「十一代慶入造印 袋師友湖 指物師利斎印」 と茶碗を作った慶入以外に、箱師の利斎と袋師の友湖がそれぞれ書き付けています。しかるべき家の注文に応じた特別の調製品であったことがうかがわれます。
 茶碗も、慶入中の傑作といえる出色の出来であり、蓋表に記されているように印尽になっています。胴に段をつけ、口部にかけて、こんもりとふくらみを持たせつつ内に抱え込ませた口造りはまことに巧みで、慶入が凡工ではなかったことを如実に示しています。口縁には大きく起伏をつけて沓形に歪ませていますが、大振り円形の高台は畳付幅広く、くっきりと端正に仕上げ、高台内、胴、腰などに慶入使用の五つの印を捺しています。すなわち初期の楽字印(蛛蜘巣印)を一方の胴に、一方に了入と似た草書の楽字印、見込には俗に中印と呼ばれる董其昌の法帖から選んだ楽字印、高台に隠居後使用の白楽印、高台脇に 「十一代喜貫」 の方形印などで、胴や見込に捺した印の上には黒釉をかけはずして透明釉をかけ、印判の装飾的効果を意図しています。

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