久居古窯址群 ひさいこようしぐん

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鶴田 純久の章 お話

三重県一志郡久居町の通称吉江の台地に所在する須恵器窯跡群。既発見窯跡の総数は四基で、群洽呼ぶにはあまりにも小規模ですが、いずれも五世紀末から六世紀初頭頃の窯跡であるようで、当地方としてはもちろん、大阪の陶邑窯を除けば須恵器窯とにては全国でもその成立年代が最も古いものの一つであります。
久居窯群の所在する吉江の台地は標高約30mばかりの第三紀の独立残丘であるようで、窯跡はその丘陵斜面に数十mの間隔て横に並んで構築されていました。
窯体の構造はいずれも半地下式の宿窯と推定されます。
これらの窯で焼成された須恵器には、杯・蓋・高杯・壺各種・提瓶・鉢・甑・器台・甕など十七器形二十五種の器種があります。
この須恵器の器形、器種の組み合わせ、製作技法は、いずれも同時期の大阪の陶邑窯群の製品と極めてよく似ています。
あるいは久居窯群の開窯を大阪の陶邑窯の工人の移住の結果とみることができるかもしれないようです。
なお久居窯群の製品についていま一つ注目すべきことは、一部で埴輪および土師器を焼成していることであります。
この事実は、陶邑窯群の拡散の結果として成立した三重の久居窯群が、その開窯に当たって在地の土師器生産者達を含み込んだのではないかという推測を可能にし、地方窯の成立を考えるうえで極めて興味深いです。
(『久居古窯址発掘調査報告』)

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