方六・焙僅とも書きます。
素焼の土鍋の一種で物を灼るのに用いる庖厨具であります。
『和漢三才図会』によれば「按ずるに砂鍋は即ち瓦蝸、毎に用ゐて薬物及び茶、米穀を焙るに文人を以て徐かに之を攬き廻すべし、相伝ふ、源義経の妾静と名く、或時静、吉野勝手明神の前に於て法楽の舞をなす、人みな称歎す、俗に砂鍋を呼びて法楽と名くるはしずかに舞はせとの謎ならんか、播州より出づるもの佳し、近世摂州大坂多く之を作る」とあります。
また河内国埴田(大阪府羽曳野市埴生野)・筑前国柳河(福岡県柳川市)より出るものは埴田灼熔といわれ茶器として賞用されます。
茶の湯では炭手前に必要な器具で土鍋ともいい、炭手前の節に炉または風炉の灰を入れ、灰杓手の付属品を添えて持ち出します。