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鶴田 純久の章 お話

コバルト化合物は青の着色材として窯業に広く用いられる。これは珪酸コバルトが安定した鮮麗な青色を呈することによる。一般に酸化コバルトを用いるが、他の化合物を施した場合も、焼成に際してはいったん酸化物となったのち珪酸塩を形成して青を生じる。呉須はすなわち種々の不純物を含有する天然コバルトである。かつてヨーロッパの鉱夫が地中にいわゆる土神というものの存在を信じていた頃、プロシア国サキソニ州であたかも真の銀のように重くかつ光輝のある鉱石を発見したが、これをどのように精錬しても銀を生じないばかりか、わずかに鼠色を帯びた灰と葱のような悪臭を発するばかりであった。そこでこれは妖神不思議な機械を使用して銀を消失せしめたためであるとして、これに土神または悪魔の意を有すコボルトという名を付け、この鉱物は採鉱の際には捨てて顧みなかった。その後この用途が発見され、製陶用としては1720年頃マイセン官立製陶所において初めて供用され、以来数十年同所において十分その用途を広めた。目下青色顔料その他として窯業界に他のどれよりも最も広く賞用されている。わが国には1867年(慶応三)に瑞穂屋卯三郎が初めてフランスよりこれをもたらし、発色が非常に鮮麗なので染付用として大いに賞用され、天然コバルトである中国呉須・砂絵釉などは用いられなくなった。そして大正末期頃か酸化コバルトはあまりにも単調で天然コバルトの雅趣のあるのに及ばないとして、種々の合成物が出た。

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