名物。
楽焼き茶碗、黒、長次郎作、外七種の一つ。
利休がこの茶碗を芝山監物に贈ったところその返礼に鷹野の雁を贈られましたので、「思ひきや大鷹よりも上なれややき茶碗めが雁取らんとは」との一首の狂歌を書き付けて挨拶の一札を送りました。
この逸話から人呼んでこれを雁取といいます。
懐が広く釉色・光沢の美麗な茶碗であります。
芝山監物ののち、仙叟宗室に伝わり、さらに数人を経て1770年(明和七)4月堺の松屋作左衛門から金三百両・銀五十枚で矢倉理右衛門に、それから加賀の本田安房守、能久平、古河虎之助と転伝し、のちに井上家に納まりました。
(『楽焼き名物茶碗集』『楽家代々之書』『本朝陶器孜証』『大正名器鑑』)