名物。漢作文琳茶入。
田村は原所持者の名であるが何者であったのか明らかでなく、明治の田村子爵家の祖田村左京太夫が所持していたものではないかと推測されるだけであります。
竹丹州土屋左門を経て松平上野介に伝わったもののようであります。
のち江戸十人衆の河村伝衛方に伝来し、馬越恭平を経て藤田伝三郎家に入りました。
(『大正名器鑑』)
たむらぶんりん 田村文琳
漢作唐物文琳茶入。
名物。
「田村」の名は所持者名によるものと思われるが明らかでありません。
あるいは田村左京大夫(元和二年はじめて一の関城主となった人)の所持であったろうか。
伝来はその後竹丹州(竹中丹後守重門某)・土屋左門を経て松平上野介(松江支藩広瀬侯直義)に伝わり、その後江戸十人衆河村伝兵衛に移り、同家入札に出て馬越恭平の入手するところとなりました。
さらに藤田伝三郎が所望し、現在は藤田美術館蔵。
茶入は文琳としては腰のすぼまった形で、口造りは捻り返しが浅く、甑は文琳としては高い方で、口縁一ヵ所に窪みがみられます。
釉景は総体に飴色釉と黄釉が交錯して、一部は鶉斑をなします。
周りから肩全面にかけて黄釉がかかり、ずらふ一部が集結して一筋のなだれとなって置形をつくっています。
胴全体にめぐる轆轤目により釉色が段々になっています。
土は盆付周りにぎりぎりに現われ金気色で、底は窪んで不鮮明ながら糸切底となっています。
総じて姿の凛々しさ、釉景の光沢と多彩、さらに完全無であることなどから、文琳茶入を代表する一つとされています。
【付属物】蓋―二 仕覆―三、雲珠緞子・細川緞子・宗薫緞子(図版右より) 仕覆箱書付小堀遠州筆 家黒塗、金粉字形・書付同筆 内箱 桐二重面取、書付同筆 堆朱孔雀彫丸盆盆箱書付同筆 添幅―二、小堀遠州・船越伊予守永景筆
【伝来】竹丹州土屋左門―松平上野介 河村伝兵衛 馬越恭平 藤田伝三郎
【寸法】 高さ:6.4 胴径:6.4
【所蔵】 藤田美術館