Ninsei: lotus-flower shaped incense burner, enamelled wareHeight 26.4cm Hōkongō-inRegistered as Important Cultural Property
重要文化財
高さ26.4cm 口径24.2cm 底径20.2cm
法金剛院かつて伝仁清作として国宝に指定され、現在は重要文化財になっていますが、伝仁清としたのはこの作品には仁清印が捺されていないからでしょう。またその後、仁清ではなく初期京焼に属するものではないかと推測されたりしましたが、数多くの仁清の作品を手にした上でいま一度観察しますと、土味、上絵具、作行きのおおらかさなどさまざまの点で、やはり御室焼仁清の窯で作られたものではないかと思われます。この香炉は、明治五年に法金剛院主が夜店で発見し、後に帝室博物館長町田久成が国宝に指定したという挿話があります。
胴には大まかに八弁の蓮弁をあらわし、台にも間隔を置いて内に輪宝を配した蓮弁を八弁めぐらし、縁をうねらせた蓮葉形の蓋が被せられています。蓋中央には先に蓮の実をつけた金剛杵の把手を鈕にし、また蓋の五方には梵字を透彫りであらわして煙出しとしています。
胴の複弁の蓮弁は赤であらわして金線描でくくっていますが、その作風などは 「色絵芥子図茶壺」 と共通のものであり、けっして巧妙ではありませんが、全体たっぷりとした形に蓮弁の意匠がよく調和しています。
土はやわらかな白土で、胴の内側には白濁釉をかけ、台の裏は露胎にし、蓋裏には白濁釉をかけています。蓮葉形の蓋の全面に緑の上絵具をかけて、一見交趾焼風に表現しています。
この蓮葉と似た作りの破片が仁清の窯跡から出土していますので、やはり仁清窯の製と断じてよいのではないかと思われ、おそらく御室焼の色絵陶器としては、初期のものでしょう。