Ninsei: water jar with peony design, enamelled wareHeight 14.0cm Tokyo National Museum
高さ14.0cm 口外径15.5cm 底径9.9cm
東京国立博物館
あたかも棗のような形の水指を仁清は好んで作ったらしく、三つ現存している。なかでは、かつて昭憲皇太后の御所持であったこの水指がもっとも優れている。
肩にくっきりと稜をつけ、平らな口部の中央を口にして、口造りは段をつけて蓋を落とし掛けるように作られている。胴の四方に格狭間風の窓を配し、そのなかに牡丹の花をそれぞれに描いている。
土坡と霞は金泥であらわし、牡丹は赤や銀、金で描かれ、銀の花弁を赤でくくった上絵付は 「色絵芥子図茶壺」 などにも見られる仁清独特の表現であり、牡丹の葉脈は針描きで描いている。地には菱花地文を銀と緑、赤、金で上絵付し、あたかも蒔絵のような趣に絵付しているが、銀が焼けて黒ずんでおり、他の上絵もその影響で黒ずみ、口まわりには、赤地に波濤文を銀で上絵付している。底は縁を細く残して浅く平らに削り込み、裾から底にかけは土見せで、仁清独特のやわらかい土味である。底の左側中央に、茶壺などと同じ「仁清」の大印が捺されている。
明治四十一年一月五日に、昭憲皇太后が帝室博物館に下賜されたもので、いまは東京国立博物館に保管されている。