銹絵染付芦鶴文蓋茶碗

銹絵染付芦鶴文蓋茶碗
Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

Kenzan: covered bowls with reed and crane design, underglaze brownand blueMouthe diameter 11.7cm each
高さ7.0cm 口径11.7cm 底径4.5cm
 椀形の身にやや平らな大振りの蓋が伴なった平凡な器形の揃物蓋茶碗です。乾山焼には同形のものが数多く伝わっていることから推して、おそらく乾山はこの手の素地を大量に仕入れ、それに独特の絵付をして市販したのでしょう。もっとも今では雑器的な蓋茶碗に用いられることはなく、一個ずつ蓋をはずして抹茶碗に使うことが多いですが、これは昔のままに身、蓋とも十客揃って伝存している例であり、しかも身と蓋の内外にあらわされた芦鶴の文様も特に優れています。技法は筒向付 (図129) と同じく白化粧地を部分的に施し、その上にまず呉須で波文様を描き、さらに鉄絵具で鶴をおおまかに配し、鶴の羽や輪郭の一部に針描きを加え、身の高台内を残した全面に透明性の釉をかけて本焼しています。白化粧下地の配置のおもしろさ、鶴をさまざまの様子に描きつつ、しかも一客ずつ自由に変化をつけるなど、決して職人的な絵付ではなく、風流する心のうかがわれる意匠です。身の高台内にそれぞれ 「乾山」の文字を書していますが、書体は不揃いであり、いわゆる共箱はないが制作当初からの箱に収まり、蓋表に 「正徳三年」 (1713) の年紀が書されていますので、正徳二年に二条丁子屋町に移ってから間もなくの作ではないかと推測されます。

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