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鶴田 純久の章 お話

高さ8.3cm 口径10.2cm 高台径5.1cm
樂美術館
 弘入は、明治二十三年三十四歳の時、初代長次郎の三百年忌にあたって父慶入とともに追悼茶会を催し、記念に赤茶碗三百を作って配り物にしましたが、この茶碗はその一つです。共箱蓋表には 「赤茶碗 (楽字印) (十二代喜長印)」、蓋裏には 「長次郎三百年忌造之庚とら秋 十二代 吉左衛門 印 喜長」と記しています。年忌の数茶碗ではありますが、弘入青年期の典型的な作品であり、茶碗の作行きもなかなか優れています。
 長次郎風の姿ですが、釉調はまったく異なり、また目や指跡を残して変化をつけています。胴には内外にかけて火変りが鮮やかにあらわれ、白釉が白雲のように漂って美しい景色になっています。高台の一部に釉がかかっていますが、ほとんど土見せで、高台内中央にこの年忌用に碌々斎が書した草書体の楽字印を捺し、右横に 「十二代造」 左に花押を彫っています。見込には常用の楽字印と「十二代 喜長」 の印を捺しています。

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