金継ぎを受け賜っています。お気軽にお問い合わせ下さい。

浪花

浪花(なにわ)

古瀬戸茶入 大阪・藤田徳次郎氏 所蔵

名称
松平左近将監乗邑(まつだいら さこんしょうげん のりさと)の『名物記』に「享保7年(1722年)に大坂で求めた」とあり、手に入れた場所の地名(大坂・浪花)をそのまま銘(名前)としたものと考えられます。

寸法(センチ換算)
※1寸=約3.03cm、1分=約3.03mm、1厘=約0.3mm、1匁=約3.75gとして計算しています。
高さ:2寸1分 = 約6.36 cm
胴径:1寸9分 = 約5.76 cm
口径:7分 = 約2.12 cm
底径:1寸1分 = 約3.33 cm
肩幅:2分2厘 = 約6.66 mm
甑高(こしだか):1分8厘 = 約5.45 mm
重量:19匁6分 = 約73.5 g

附属物
・蓋(ふた):2枚(巣なし)
・御物袋(おものぶくろ):白羽二重(しろはぶたえ)
・仕覆(しふく・袋):3枚
 - 八左衛門廣東(はちざえもんカントン、裏地:緒つがり遠州茶)
 - 金地中牡丹金襴(きんじなかぼたんきんらん、裏地:緒つがり紫)
 - 雲鶴純子(うんかくどんす、裏地:緒つがり紫)
・蓋袋箱:桐・白木
(図中・箱などの文字情報)
・古瀬戸 尻膨浪花 ふた袋
・挽家(ひきや):黒柿斑入片身替(くろがきふいりかたみがわり)、金粉による字形
 「浪花」の書付:松平左近将監乗邑
・仕覆(袋):有栖川(裏地:柴田どんす、緒つがり遠州茶)
・内箱:桐・白木、「浪花」の書付:松平左近将監乗邑
・外箱:黒塗、面取金粉、金粉による字形
 「名物浪花茶入」
・添盆(そえぼん):存星作(ぞんせいさく)、黒塗丸盆
 寸法:径5寸5分(約16.67 cm)、底径4寸1分(約12.42 cm)
・同箱(盆の箱):桐、金粉による字形
 「存星盆」

雑記(各文献の記録)
『名物記』の記述:
浪花 古瀬戸。享保7年に大坂にてこれを求める。高さ2寸1分、胴1寸8分8厘、口7分8厘、底1寸1分。蓋2枚。袋3枚[金地(裏地:かべちょろ、緒つがり紫)、八左衛門廣東(裏地:海気、緒つがり遠州茶)、雲鶴純子(裏地:かべちょろ、緒つがり紫)]。挽家は片身替り黒檀、金粉での書付あり、袋あり、す川(裏地:どんす、緒つがり遠州茶)。(茶入の図あり)

『古今名物類聚 拾遺之部』の記述:
浪花 古瀬戸。(寸法や附属物の記事は、すべて上記の『名物記』と同じ)

『茶器名物図彙』(草間和楽 著)の記述:
浪花 古瀬戸 松平左近将監。(寸法、附属物の記録、茶入の図あり)

『名物一覧』(戸田一玄庵 著)の記述:
古瀬戸 肩衝 浪花

『東都茶會記 第四輯下』(大正5年11月21日 網島大茶会)の記述:
大広間にて「香雪翁(藤田伝三郎)」の遺愛品が陳列された際、この「古瀬戸 浪花」も飾られました。
(当日は、箱は遠州書付、存星丸盆が添えられ、仕覆として雲鶴紋純子、八左衛門廣東、金地大牡丹金襴が合わされていました)

伝来
名物記に「享保7年に大坂で求めた」とあるように、その頃は松平乗邑が所持していましたが、その後の伝来は詳しく分かっていません。明治14~15年(1881~1882年)頃に、藤田蘆庵(伝三郎)翁が丹波国部の某氏から購入したといわれています。

実見記(実際に観察した記録)
口作りの端の折り返し(ひねり返し)はなく、甑(こし)の下はやや張っています。肩はきりっと力強く張っており(衝き肩)、肩先から腰にかけて次第に膨らんでいく形状です。
全体の地肌は、赤みを帯びた柿金気(かきかなけ)色をしており、その上に黒飴釉(くろあめゆう)による斑(まだら)模様が鵄(とび)の羽の文様のように現れています。胴体には轆轤(ろくろ)の目が数段にわたってめぐり、その上に黒い筋が見えます。
釉薬の流れ(置形)は、肩先から底の盆付(底の接地部)にいたるまで一筋の「雪崩(なだれ)」となって、柿金気色の上に黒釉がかかり、一部が底の境界線にまで垂れかかっています。
裾から下は赤みを帯びた(釣気色)土を見せており、三段に面取りがされています。底の際(きわ)にいたると、周囲の約半分にわたって横方向の箆(へら)筋が一本通っています。糸切(底の糸切り跡)は細かく、その縁が少し刻まれているか、あるいは欠け落ちています。
内部の口縁部にも釉薬がかっており、以下は轆轤目がめぐる全体の鵄斑(とびふ)が大変見事であり、古瀬戸の特色が歴然と現れています。胴体には「火間(ひま)」のような、釉薬が薄く抜けて下地の柿金気色が見える部分(ヌケ)があります。箆(へら)による強い削り跡はなく、形が上品に引き締まっており、見どころ(景色)が非常に面白い優れた茶入です。

【原文】

浪花

古瀬戸 大阪 藤田徳次郎氏蔵

名称
松平左近将監乗邑名物記に「享保七年に於て大坂に求む」とあり、即ち所出の地名を以て其の銘と為せしものなるべし。

寸法
高 弐寸壱分
胴径 壱寸九分
口径 七分
底径 壱寸壱分
肩幅 弐分弐厘
甑高 壱分八厘
重量 拾九匁六分

附属物
一蓋 二枚 窠なし
一御物袋 白羽二重
一袋 三ッ
 八左衛門廣東(裏:緒つがり遠州茶)
 金地中牡丹金襴(裏:緒つがり紫)
 雲鶴純子(裏:緒つがり紫)
一蓋袋箱 桐 白木
(図中・文字配置等)
古瀬戸 尻膨浪花 ふた袋
一挽家 黒柿斑入片身替 金粉字形
「浪花」書付 松平左近将監乗邑

有栖川(裏:柴田どんす、緒つがり遠州茶)
一内箱 桐 白木 書付 松平左近将監乗邑
「浪花」
一外箱 黒塗 面取金粉 金粉字形
「名物浪花茶入」
一添盆 存星作 黒塗丸盆
  径 五寸五分 底径 四寸壱分
同箱 桐 金粉字形
「存星盆」

雑記
浪花 古瀬戸 享保七年於大坂求之。高さ二寸一分、胴一寸八分八リン、口七分八リン、底壱寸壱分。蓋二枚。袋三、かな地(裏:かべちょろ、緒つがり紫)、八左衛門廣東(裏:海気、緒つがり遠州茶)、雲鶴純子(裏:かべちょろ、緒つがり紫)。挽家片身かはりこくたん、金ふん書付、袋あり、す川(裏:どんす、緒つがり遠州茶)(茶入の圖あり)
(名物記)

浪花 古瀬戸 (寸法附属物の記事、全く前掲名物記に同じ)
(古今名物類聚 拾遺之部)

浪花 古瀬戸 松平左近将監 (寸法、附属物、茶入圖あり)
(草間和楽著 茶器名物図彙)

古瀬戸 肩衝 浪花
(戸田一玄庵名物一覧)

大正五年十一月二十一日網島大茶會
大廣間 香雪翁遺愛品陳列
田村文琳(遠州遠州張成孔雀丸盆添)古瀬戸 浪花(箱遠州、存星丸盆添)
袋(遠州純子、日野廣東)袋(雲鶴紋純子、八左衛門廣東、金地大牡丹金襴)
正意岡邊(袋牡丹紋純子、角龍、鎌倉廣東)利休斗々屋(箱遠州)
仁清(枯木山水茶碗、下略)
(東都茶會記第四輯下)

傳来
名物記に享保七年於大坂求之とあり、其の頃松平乗邑所持なりしが、其の後の傳来審かならず。明治十四五年の頃、藤田蘆庵翁、丹波園部の某氏より購入せりと云ふ。

實見記
口作枯り返しなく甑下張り、肩キッカりと衝き肩先より腰に至るまで次第に張る、總體柿金氣色の色の上に黒飴釉鵄斑を成し、胴體轆轤目數段繞り、其の上に黒筋現はる、置形肩先より盆附に至る一ナダレ、柿金氣色の上に黒釉掛り、一部垂れて底線に掛る、裾以下釣氣色の土を見せ三段に面取り、底際に至り周囲約半分に亘る横箆筋一本あり、糸切細く其縁少し刻まれ、若くは缺け落ちたり、内部口縁紬掛り、以下轆轤目繞る全體鵄斑美事にして、古瀬戸の特色歴然、胴體に火間の如き薄き柿金氣色のヌケあり、無箆にて形締り、景色面白き茶入なり。

タイトルとURLをコピーしました