酸化コバルトは東洋における陶磁器の染付あるいは呉須絵に使われた顔料呉須の主成分であります。
これは摂氏1250度以上の焼成温度において釉下装飾用下絵具として安定であります。
純度の高い酸化コバルトを顔料として還元焔で焼成すると紫がかった藍色となり、酸化焔で焼成すると黒味が強くなります。
顔料呉須には酸化コバルトのほか二ッケル・銅・鉄・マンガンなどの金属酸化物が不純物として含まれています。
これらの不純物はそれぞれ酸化コバルトの発色に影響を与えます。
酸化鉄は還元焔の場合は淡い青色、酸化焔の場合は黄色または褐色味、酸化マンガンは還元焔で灰紫色、酸化焔で灰褐色を与えます。
酸化銅は高温で揮発してコバルトの発色には影響が少ないようです。
釉の組成も呉須の呈色に影響を与えるものであります。
(一)珪酸やマグネシアが多いとコバルトの色は黒味かかります。
(二)アルミナが多い時は紫藍色が鮮かになります。
(三)石灰が多いと色は濃く暗色かかります。
(四)塩基成分に酸化亜鉛を用いると藍色は空色になります。
顔料としての酸化コバルトは(CoO-ZnO-Al2O3)の海碧と酸化コバルトとカオリンからつくる焼貫呉須があります。
(CoO-AlzOs-SiOz)系の紺青はガラスエナメルとして、(CoO-ZnO-Al2O3)系の海碧は上絵具として、また(ZnO-CoO-AUOs-Crz’)系の青緑またはピーコック(CoO-MnO-FezOj-CrzOs)系の黒などがあります。
また酸化コバルトはピンクの結晶釉をつきます。
(『工芸用陶磁器』『セラミック原料』)