古瀬戸茶入の一手。
かつて瀬戸赤津窯で茶入を焼き、ひび・割れ・取り付き・抜けなどのある類を山谷に捨てておいたものが、おのずから埋もれて古びが付いたため土釉の見事になったのを、谷底より掘り出して用いたものであります。
それゆえ無疵の茶入はまれでありますが、この茶入の銘ともいえるもので疵は少しも苦にならないようです。
下釉は柿色で茶入によって濃いものと薄いものとがあります。
上釉には黒・薄飴・黄・薄黒などがあって、釉組はさまざまであります。
しかし数百年土の底にあったので土釉の吟が沈み入り見事にみえるものであります。
(『茶器弁玉集』)