瀬戸後窯茶入、利休地蔵手。
胴に三本の竪箆があり、これを奈良県三輪神社の三光鳥居が三門口となっていることと結びつけて銘としたものでしょう。
利休地蔵手というのは、中興名物の後窯利休窯の「地蔵」 (197~頁)と同手という意味で、窯が同手であるというばかりでなく、容姿・釉景もまた実によく似ています。
すなわち形は口が広めで、甑は捻り返しが強く、肩が強く張り出していることや、肩の少し下でややくびれ、腰のあたりでわずかにふくらんで裾に至り、一面とって畳付となっていることは、まったく本歌と一致します。
釉質・土質なども同種であることがよくわかり、胴の轆轤目にそって瀬戸釉が濃淡をなして斑の景をつくっていることも共通しまだらています。
ただ強いて違うところといえば、「地蔵」の方は箆が器面と平行に用いられているのに対し、この「三輪」の方は直角に箆が使われて、銘の由来の三本の平行竪箆のほか数本が縦横に削り込まれ、この茶入をきわめて個性的なものにしています。
裾以下は土見となっていて、白鼠色で堅緻な土味を呈しています。
底は糸切底です。
家の甲に朱漆書で「地蔵手」とあり、同蓋裏に木津宗詮が銘を書き付けています。
【付属物】蓋 仕覆二、縹地小牡丹金襴・博多間道(図版右より) 挽家花櫚、書付木津宗詮筆
【寸法】 高さ:8.9 胴径:6.〇
【所蔵】滴翠美術館