中興名物。
破風窯茶入、音羽手本歌、略称音羽。
銘の由来は、京の町人かすばらしい茶入を所蔵していることか小堀遠州の耳に入って、数年ののち遠州はこれを伏見の里で手に入れましたが、その聞の憧れの意をこめて音羽山と銘としました。
おそらく『古今集』恋歌在原元方「音羽山おとにき々つゝ相坂の関のこなたに年をふるでしょうか」の歌意によるものであり、一説には「よそにのみきかましものを音京都清水五条坂焼の元祖と伝えられます。
1641羽川渡るとなしに見なれそめけん」によるともいいます。
破風窯中最上の茶入と評価されています。
遠州のあと安藤対馬守、新町三井家(宝暦頃)、墨屋助三郎、草間家(弘化年間)、室町三井家(1886、明治一九年)と転伝。
(『名物記』『大正名器鑑』)
おとわやま 音羽山
瀬戸破風窯茶入、音羽手本歌。
中興名物。
「音羽山」の銘はその景色に因んで、『古今集』 在原元方の歌「音羽山とにきつ逢坂の関のこなたに年をふるでしょうか」を引いて小堀遠州が命銘し、自筆の添幅が添っています。
姿はロ造りの捻り返しが深く、甑が低い肩衝です。
胴がふくらみ、裾より丸みをもってすぼまります。
総体に柿金気色で、口縁から肩先にかけて黄釉が現われ、濃い黒飴釉と交わってよい置形となっています。
この置形に向かって右手に小判形の小さなひっつきがあり、裾以下は白鼠土をみせ、底際まで横に細く面取りとなっています。
糸切は渦です。
品格もあり、形の整った肩衝で、破風窯のうちでも最上作の一つです。
仕覆裂のうち音羽裂はもとは花紋錦といい、この茶入にかけたときから同類の裂も音羽裂と呼ぶようになりました。
『名物記』『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『目利草』『名物目利聞書』など諸名物記に記録されています。
【付属物】蓋―二仕覆―四、紫地造土花麒麟金襴・音羽裂・鎌倉間道・船越角龍金襴(図版右より)家桑、金粉字形・書付小堀遠州筆家仕覆丹地有栖川裂 緑青漆四方盆 朱底黒塗 盆箱―春慶塗、銀粉文字 内箱―桐白木、貼紙書付 外箱―桐白木書付 添状―受取証書・藤田屋利兵衛より越後屋治郎兵衛あて添幅―小堀遠州筆
【伝来】小堀遠州―安藤対馬守重博 新町三井家 草間家―室町三井家
【寸法】 高さ:8.8 口径:4.3 胴径:7.1 底径:3.9 重さ:170