名物。真中古茶入、大覚寺手。
小堀遠州所持、松平不昧に人り、さらに高橋袷庵の所蔵となりました。
(『茶道名物考』)
びくさだ 比丘貞
瀬戸真中古窯茶入、大覚寺手。
中興名物。
茶入の胴の締まった姿が、狂言の比丘貞の面に似ていることからその名が付けられました。
命銘は小堀遠州で、自らこれを所持し、のちに酒井左衛門に伝わり、さらに加州岡野屋伊兵衛の所蔵となりました。
そして安永の頃、銀五百枚で松平不昧がこれを求め、『雲州蔵帳』 中興名物の部第五位に列しています。
また『大円庵茶会記』によれば享和二年七月、江戸赤坂藩邸内の谷の茶屋落成茶会にこれを用いています。
その銘の由来のごとく胴で強く締まり、ただし腰は大きくふくらんでいるので米一のごとく俵形とはならず、安定した瓢形をなしています。
大覚寺手としては珍しい姿です。
口はやや広めで、捻り返しはきわめて浅く、甑は下張りとなっています。
釉景はすこぶる変化に富み、総体に柿金気地に黒釉の飛雲数点、黒ずんだ朱色一点、さらに石はぜ・窪み・箆目など 千変万化の景色を呈しています。
箒庵翁はこの姿景から、のちの新兵衛作「山雀」 「張果郎」などが生まれたものであろうとされています。
『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『本朝陶器攷證』など諸書に記録されています。
【付属物】蓋 蓋箱書付松平不昧筆 仕覆―二、白金地古金襴・吉野間道(図版右より) 仕覆箱書付同筆家―曲物春慶塗、内黒塗、金粉字形・書付小堀遠州筆
【伝来】小堀遠州 酒井左衛門 加州岡野屋伊兵衛 松平不昧
【寸法】 高さ:7.3 胴径:(上部)5.8、(下部)7.1