黒楽 ノンカウ七種ノ内
付属物
箱 桐 白木
同蓋裏書付 覚々斎宗左筆
伝来
大阪絆屋―赤星家―大阪 磯野良吉
所載
本朝陶器攷証 伏見屋宗理著 名物茶碗図会 箒庵文庫乙第二号 書画骨董掘出物語 閑窓雑記
寸法
高さ：7.6cm 口径：11.2～11.8cm 高台径：5.4cm 同高さ：0.8cm 重さ：320g
ノンコウ七種の筆頭といわれ、覚々斎銘の升（ます）は、形の四方から出ている。
素地は白土で土見であるが、土見はノンコウから始まるといってよく、長次郎に対して一つの特色になっている。薄作でロはやや抱え、ノンコウ独特の光沢ある漆黒の釉が厚くかかって、口辺から胴にかけては垂れ幕状になり、いわゆるノンコウの幕釉となっている。正面に幕釉につづいて、これもノンコウ得意の黄抜けが遠山形に表われて、大きな景になっている。
黒釉の調合や焼成にも工夫して、独特の玉虫釉を生み、幕釉や黄抜けの斬新な意匠を創意して、成形の神技をいっそう栄えあらしめた技量は、長次郎とはまた別天地を拓いたもので、光悦が「楽の妙手」と讃えたゆえんである。
見込みのひろいのも特色であるが、これは光悦の影響とみられる。黒釉が薄いところでは飴がかって、濃淡の趣を表わすのもノンコウの特色である。土見の高台まわりには水釉がうすくかかり、内に楽印が捺されて、畳付には目が五つある。
