


唐物 大名物 侯爵 徳川義親氏藏
名稱
堺の人茜屋吉松の所持せし茄子茶入なり、其形大振なれば、或は茜屋大茄子ともいふ。古今茶人系譜に武野紹鴎の門下堺人茜屋宗佐の名あり、是れ吉松と同人なるや否や今其傳を審かにせず。
寸法
高 貳寸四分五厘
胴徑 貳寸五分六厘
口徑 壹寸參分
底徑 壹寸又壹寸五厘
甑高 壹分五厘
肩幅 殆どなし
重量 貳拾八匁七分
附屬物
一蓋 一枚 窠
一御物袋 白縮緬
一袋 一つ
納戸地波に盡模様純子 裏海氣 緒つがり萠黄
一袋箱 桐
一挽家 黑塗
袋 堅縞廣東 裏花色地小牡丹唐草模様純子 緒つがり白
一內箱 桐 白木 金粉字形
あかねやなすひ 御茶入
一外箱 桐 溜塗
雜記
大茄子 堺の分 茜屋吉松 (天正名物及び東山御物内別帳)
唐物小壺 あかねやなすひ 尾張樣 (玩貨名物記)
茜屋大茄子 唐物小壺 大名物 尾張殿 (古今名物類聚)
茜屋茄子 栗色にして光澤あり胴に一線の筋あり。徳川家康駿府に於て先祖義直に讓興せられ、爾来相傳す。 (尾州徳川家藏品台帳)
傳來
堺の人茜屋吉松の所持にして徳川家康に傅はり、家康駿府に於て之を尾州藩義直に賜ふ、爾來傳へて尾州家に在り。
實見記
大正八年六月五日、名古屋市東區大曾根町德川義親侯邸に於て實見す。
唐物茶入、口作括り返し深く、總體黒飴釉の上に蛇蝎釉、肩下より楔状に流れ掛りて、底土に至りて止まる、胴を繞れる沈筋は一部少しく喰違ふ所あり、底廻りに土を見る事多く絲切至て細かし、平常の茄子よりも頗る大形にして、地釉上釉共稍國司茄子に類せり、内部口縁釉掛り、以下轆轤目繞り、底に至りて渦狀を爲す。總體無疵大形茄子なれば打ち見たる所大々として豊麗なり。



