中興名物。真中古茶入、橋姫手本歌。
小堀遠州所持。
銘は遠州が私を待っているだろうという気持ちで、『古今集』「さむしろに衣かたしきこよひもや我を待つらむ宇治の橋姫」から引いて名付けたものであります。
若狭酒井家に伝わりました。
(『茶道名物考』)
はしひめ 橋姫
瀬戸真中古窯茶入、橋姫手本歌。
中興名物。
宇治から見出されたことで、小堀遠州が『古今集』の古歌「さむしろに衣かたしき今宵もや我を待つら宇治の橋姫」を引いて命銘したといわれます。
『茶湯評林大成』には「此茶入遠州公無類なる茶入なりとて、取上ても見る人もなきに恨めき事なり、我を待つらん、さらば名を付得させませんとて、橋姫と付玉ふ(後略)」と記されています。
また『大正名器鑑』の高橋箒庵の実見記でも、景色面白く、光沢美麗で、真中古作中第一流茶入の本家たるに背かずとあります。
総体に柿金気色に黄釉と浅葱色が交わり、色分けも鮮やかに肩から分かれて流れ、透明に近い黄釉が素地の轆轤目までも透かしてみえます。
その中に黒飴釉のなだれをみせて糸切まで下がり、随所に溜りをなしています。
肩衝なが筒形はこの手の特徴で、土も堅くみえるのは真中古の特色でしょうか、野田手「面影」(163~頁)と並び、釉景の多い茶人として知られています。
仕覆も遠州の見立てを揃えて四種添っていて、遠州は特にこの茶人を愛したと伝えられていますが、この手は本歌に続く同類が少ないです。
【付属物】蓋仕覆―四、白茶地宝尽金襴・清水裂・白地石畳金襴・花色石畳緞子(図版右より) 仕覆箱 桐白木、書付小堀遠州筆箱 桐白木、書付同筆譲状―三井八郎右衛門より高橋有無允(若州酒井家用人)あて
【伝来】 小堀遠州―冬木小平次―京都三井家―若州酒井忠禄
【寸法】 高さ:7.0 径3.9 胴径:6.2 底径:4.2 重さ:160