
中興名物 平瀬家伝来
茶杓
珍しく太づくりで、櫂先の撓め方もきっぱりしている。約束どおり櫂先左肩さがりだが、節から上の樋がきわだってはっきりしている。「瀑布」の銘の由来するところである。そうして節に虫喰あり、節下から切止近くまで左側にそぎ目を残す。 「松風」など平凡に見える幽玄とは対蹠的に、個性の強い茶杓である。
筒
宗旦のなかでも稀に見る見事な筒である。総削りの真筒でありながら、筒正面を薄く面取して、しかも黒みがちな変り斑が苔のようににじみ出て、あたかも瀑布の水が巌にくだけて落ちるような景観である。稚拙な宗旦の文字はたどたどしく表面に書かれ、側面は玉舟筆である。
表 宗旦筆「瀑布 咄斎」 側面 玉舟筆「坐断天下人舌頭」
付属物
替筒 書付 平瀬露香筆
内箱 桐 白木 書付 「瀑布茶杓 玉舟和尚筒記宗旦添状有」
中箱 杉 白木 書付 矢倉竹翁筆「宗旦瀑布茶匙」
同蓋裏 書付 同筆「外ニ咄々斎瀑布之文添(花押)」
総箱 桐 白木 書付 戸田露吟筆「元伯宗旦茶杓瀑布 文副後藤宗伴宛 替筒平瀬露香君」
同蓋裏 書付 同筆「矢倉氏ヨリ伝来弌玄庵露吟了雪秘蔵」
添状 元伯宗旦より万宗伴あて
(万屋三郎右衛門後宗伴ト云宗旦弟子ナリ姓後藤氏両替町銀座也)
添書 真珠庵宗玄筆「玉舟正筆云々」
極札 古筆了意筆
追記
宗旦添状によれば、廬山の滝の意である。玉舟は大徳寺百八十五世、玉室宗珀の嗣にて宗璠という。
所載
矢倉蔵帳(瀑布 千宗旦作) 茶杓三百選
寸法
茶杓
長サ19.4cm
幅0.6―1.0cm
厚サ0.3cm
筒
長サ20.0cm
径2.4cm


添状 元伯宗旦より万宗伴あて
茶杓筒之書付進候。
瀑布廬山滝の事有之
如、仰暑さも以外候。其元
令推量候。以猶期三面上之時候。
恐惶謹言
六月廿九日 (宗旦花押)
(封) 万宗伴老 不審



