


山桜(やまざくら)
春慶作 侯爵 細川護立氏 所蔵
名称
茶入で「山桜」という銘(名前)を持つものは非常に多い。唐物には「山桜大海」があり、真中古の野田手には「三国山桜」があり、破風窯の渋紙手にもまた「山桜」がある。そして本作品は「春慶山桜」である。もしこの銘が茶入の景色(見どころや装飾表現)を表しているとすれば、春慶の作品こそが最もこの銘にふさわしいものであろう。
寸法(センチメートル換算)
高さ:約 8.3 cm (2寸7分5厘)
胴径:約 7.0 cm (2寸3分)
口径:約 2.9 cm (9分5厘)
底径:約 3.9 cm (1寸3分)
甑高(こしこう/首の高さ):約 1.2 cm (4分)
肩幅(斜面):約 2.6 cm (8分5厘)
重量:約 124.5 g (33匁2分)
附属物
・蓋:2枚
・仕覆(袋):2点
1. 浅黄地唐花宝尽し(裏地:黒)
2. 笹蔓縦縞(裏地:玉虫色、緒つがり:黄色)
・箱:1箱(桐・白木造り、表書き「山櫻」)
(小箱・挽家などの仕組)
「春慶山櫻」
・袋筥(ふくろばこ)
・挽家(ひきいえ):銭刀木(じんちょうぼく/ゼンテツボク)製
銘「山櫻」(金粉彫銘、筆者は不明)
・外箱:桐 白木造り(表書き「山櫻」)
実見記(実際に観察した記録)
大正8年(1919年)10月19日、東京市小石川区高田老松町の細川護立侯爵邸にて実見観察した。
口縁の締めや折り返しがなく、甑(首の部分)が高く、ひさしのように張った肩(廂肩)から胴が張り出し、裾にかけてすぼまっている。裾から下は鼠色の胎土が見えており、横にヘラ目(横篦)が4段施されている。底の糸切りはかすかに見えている。全体的に柿色と金色の気品ある発色が美しく、甑の際から黒釉の細い線が1本短く伸びて肩先に止まり、もう1本の線は長く肩を通り胴にまで達している。見どころ(景色)は至って少なく、さっぱりとして品が良い。立ち上がった首とひさし状の肩(立頸廂肩)の作風は他に類を見ないものであり、内部は口縁部分のみに釉薬が掛かっている。
【原文】
山櫻
春慶 侯爵 細川護立氏 藏
名称
茶入に山櫻を銘とする者頗る多し、唐物に山櫻大海あり、眞中古野田手に三國山櫻あり、破風窯澁紙手にも亦山櫻あり、而して是れは春慶山櫻なり、若し此銘が茶入の景色を表示する者なりとすれば、春慶作が最も之に適應する者なるべし。
寸法
高 貳寸七分五厘
胴徑 貳寸參分
口徑 九分五厘
底徑 壹寸參分
甑高 四分
肩幅 斜面 八分五厘
重量 參拾參匁貳分
附属物
一蓋 二枚
一袋 二ツ
浅黄地唐花寳盡 裏黒
笹蔓縦縞 裏玉虫 緒つがり繭黄
一箱 桐 白木
山櫻
(仕覆・仕組等)
春慶山櫻
袋筥
一挽家 銭刀木
山櫻 彫銘金粉 筆者未詳
一箱 桐 白木
山櫻
實見記
大正八年十月十九日、東京市小石川區高田老松町細川護立侯邸に於て實見す。
口締り括り返しなく、甑高く、廂肩にて胴張り裾窄まり、裾以下鼠色土を見せ、横篦四段を成して、底輪糸切幽に見ゆ、總體柿金氣色麗しく、甑際より黒釉の細き一線短く肩先に止まり、他の一線は長く肩を経て胴に至る、景色至て少く、サッパリとして品好く、立頸廂肩の作行他に比類を見ず、内部口縁のみ釉掛る。



