Dish with design of flower pot with peonies and treesaround rocks. enamelled ware
高さ8.2cm 口径30.9cm 高台径l5.8cm
栗田美術館
一般に尺皿といわれている大皿は、大川内藩窯で完成された色絵鍋島を象徴する作品で、大作だけに規矩正しく焼成するのは難しかったのか遺品は少ないです。現存している色絵尺皿のなかで、この皿ほど器形の優れたものは稀であり、大皿でありながら七寸皿の優作と同じような張りのある曲線を示しつつ立ち上がっています。高台が畳付にかけてややすぼまるのは尺皿共通の作行きですが、これは皿の立ち上りの深さに比例して高台も一般のものよりやや高いです。
器形の優れたものは、染付や上絵の絵付もまた格調の高いのが鍋島焼に共通した特色ですが、この皿の見込みにあらわされた岩に牡丹を植えた盆栽の絵も、染付の線描きやだみ筆は精緻であり、また染付、上絵の具ともに鮮麗に焼き上がっています。大きな銅製の花盆(植木鉢)にゆったりと岩を据え、牡丹を植えている構図は、あるいは漢画系の粉本を手本にしたかとも思われ、余白を生かした図様は非凡です。鍋島はもちろん、わが国の色絵に他に例を見ない意匠です。
さらに、外側の三方にあらわされた染付の薔薇唐草文様も、他の尺皿にない流動的な描写で、形式的ではなく、古鍋島様式がいちだんと整美された趣があります。大川内藩窯の初期、すなわち延宝三年から元禄頃にかけての作風は判然としませんが、あるいはそうした時期、すなわち元禄以前の作品ではないかと思われ、手にして深く感動した作品です。