名物。唐物文琳茶入。
博多(福岡市)の神谷宗湛所持。
宗湛の番頭はかつて南洋貿易に従事して莫大な損失を招き、主人に申し訳がないと切腹しようとした時、中国人であった妻が「実家に古陶の小壺があります。
主人宗湛は非常に茶器を好まれますので、もしその小壺がお気に召したら損失の罪を許して下さるかもしれません。
しばらく自刃は思い止まって下さい」とそれを実家より取り寄せ献上しました。
宗湛は一目見て非常に感嘆し、案の定その損失の罪を許したといいます。
これがすなわち博多文琳で宗湛の第一の秘蔵品となりました。
豊臣秀吉がこれを懇望して断られ、茶会の時に盗もうとまでしたが失敗したことが記録にみえます。
宗湛は年老いて、秀吉も亡くなり、自分の死後この茶入を永久に保存するには藩主黒田侯に献上するほかないと考え、これを黒田侯に献上しました。
それ以後黒田家では家宝として秘蔵し、代替わりの時以外はこれを門外不出として他見を許さなかったといいます。
(『博多三傑伝』)