名物。楽焼茶碗、黒、長次郎作。
一名朝鴉。
千宗旦の銘。
茶碗の枯れ痩せた姿の形容であるでしょう。
のち仙叟が朝鴉と改めました。
貧僧と同じく、鴉は朝餌をあさることからこのように銘したのであるでしょう。
作行は風折と酷似し、一対の姉妹作ということができます。
京都の日野又右衛門宗心が所持中にこの茶碗を同じ長次郎の作品濡烏の箱に入れ替えまぎらわしいこともありました。
のち京都三井家、名古屋伊藤甚助、神戸文左衛門、中村太郎吉と伝わり。
1922年(大正一石中村家売立の際に二万六千百十円で戸田弥七が落札、程なく益田家に人りました。
(『大正名器鑑』)