中興名物。
漢作文琳茶入、一名上天文琳。
岩城貞隆が所持していたのでこの名があります。
景色の変化は比類がなく、形状・釉色ともにすぐれて文琳中の秀逸と称されています。
江戸時代初期に伊達侯の所蔵となり、1916年(大正五)の同家の売立では五万六千円で坂本家に落札し、1921年(同十)の同家の売立では十二万八千円でありました。
(『古今名物類聚』『麟鳳亀龍』『大正名器鑑』『道具移動史』)
いわきぶんりん 岩城文琳
漢作唐物文琳茶入。
中興名物。
別名「上天文琳」。
もと陸奥国の戦国武士岩城貞隆の所持により名付けられました。
「上天文琳」の名については、天子に上覧の意ともいわれますが、おそらくは無上にすぐれているという意味でしょう。
のちに伊達家の蔵となりました。
姿は口造りが締まり捻り返しが浅く、甑際から裾まで円やかに胴がふくらんで、球状に近い文琳です。
いかにも豊満で美しいです。
釉がかりも変化に富み、柿金気色に濃い紫みを帯び、その間から黄みの流れ釉が中ほど左右に現出し、分流する溪間の景を想わせる釉がかりがいかにも面白く、これが置形となっています。
その他胴全体に轆轤目にそって黒褐釉が斑をなし、一部飴釉と重なったところは青まだら瑠璃色となり、光沢がすこぶる美しいです。
土白く、本糸切の角一カ所、流れ込んだ釉溜りを剝ぎ起こした痕が残っています。
底面の土は大山欠けのほかは無で、裾のあたりが赤みを帯び、麗しい黄飴釉と照応して、景色の変化比類なく、形状・釉色合わせて文琳中でもすぐれた茶入といえます。
【付属物】蓋―四、立古作・遠州好立古作・立佐作・遠州好 仕覆―四、柿地大内菱金襴・鳥襷緞子・白地古金襴・花色地蔓草紋緞子(図版右より) 挽家|鉄刀木、金粉文字・書付小堀権十郎筆 青貝四方盆鏡柳池唐子三人、表緑梅竹文様、裏縁唐草文様 盆箱 桐白木
【伝来】岩城貞隆―松平陸奥守(伊達家)―坂本家
【寸法】 高さ:6.5 口径:2.5 胴径:6.3 底径:2.7 重さ:52.5