Picture of 鶴田 純久の章 お話
鶴田 純久の章 お話

名物
高さ:6.1~6.8cm
口径:14.8~15.0cm
高台外径:4.7~5.0cm
同高さ:1.1~1.2cm

 作調総体にやや薄作で、高台ぎわから口部にかけての広がりは、直線的によく伸びて四段の轆轤(ろくろ)目をみせています。高台ぎわの削り込みは深く、しかも梅花皮(かいらぎ)もよくあらわれて力強いです。
 外側の釉調は、これもまた片身替わり状で、半面は枇杷色、半面ば青味がちであり、釉がけは総体的に薄いです。内部も青色と枇杷色どに分かれ、見込みには目跡が四つ残っています。
 撮影にあたって、山の井と雲井両碗を同時に親しく手にしましたが、山の井は雲井よりもやや引き締まりで小さく。形姿も雲井の直線的であるのに対して、山の井は胴にふくらみがあり、茶碗としての味わいでは山の井が、いちだん優れているように思われました。しかし品格の高さ:では、雲井はけっして譲るものではなく、むしろまさるとも劣らぬ格調をもっています。
 この茶碗のよさも、やはり高台部の作ゆきにおいて傑出しており、粒のそろった梅花皮(かいらぎ)があざやかにあらわれた釉調、または竹の節状に削り出された高台の作りなど、なかなか重厚であり、総体の均衡もよくとれています。
 大正十二年四月十、十一日に催された藤田香雪翁の十三回忌の茶会に用いられていますが、その取り合わせは、
床 清巌和尚筆 万法唯識の四大字横物
花矢 伊賀耳付 花 白玉椿と草花
茶入 山科宗甫 投子棗 替 唐物肩衝 銘 夜泊
茶碗 青井戸 銘 雲井 替 ノンコウ四方 銘 山窓
というものでした。
 内箱蓋表に「雲井」の銘を、その蓋裏に「播磨がたすまのはれ」にながむればなみは雲井のもの犯ぞありける」と、『千載集』の雑上、権中納言実宗の歌を書いています。筆者はこの茶碗を所持していた大阪の両替商で墨屋すなわち白山宗一の筆で、その後、白山家から藤田家に入ったもの。外箱は藤田家に入ってから調製されたもので、春慶塗りの面に藤蔓文様の金蒔絵を施しています。
(林屋晴三)

雲井 くもい

青井戸茶碗。
名物。まっすぐにのびた胴の轆轤目がよく立ち、大振りな竹の節高台と脇どりも手強く、鋭い作行きです。
青井戸特有の釉肌のうちに枇杷色の部分もあり、片身替わりの景をなしています。
見込みには目が四つ、高台周辺は脇どりのかいらぎが鮮やかで、口辺の釉溜りが景色をなしています。
「雲井」の銘は、大阪の両替商墨屋こと白山家所持の折に、『手載集』雑上、権中納言実宗の歌「播磨がたすまのはれまに見渡せばなみは雲居のものにぞありける」から命名されました。
《付属物》内箱-桐白木、書付白山宗一筆
《伝来》白山彦五郎-藤田家
《寸法》高さ6.1~6.9 口径14.8~15.2 高台径5.0 同高さ1.2 重さ275

雲井 くもい

名物。朝鮮茶碗、青井戸。銘は『千載集』雑上権中納言実宗の歌「播磨がた須磨の晴間に見渡せばなみは雲居のものにぞありける」によって名付けられた。大阪の両替商墨屋と白山彦五郎に伝来していたが、後年大阪藤田徳次郎家の蔵となった。(『大正名器鑑』)

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