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鶴田 純久の章 お話

瀬戸真中古窯茶入、野田手。
名物。
『古今集』物名の部「かはなくさばたまの夢になにかはなぐさまむうつにだにもあかぬころを」の歌か命銘されています。
もと神尾大和守元陳の所持で、その後寛政・享和 (1789~1804)の頃松平不昧の有となっていたことが、『松平不昧伝』の不味自筆朽木不見庵(竜橋) あての消息によって知られます。
その後これを親戚方に贈られた由で、さらにそこから出て近年加州石黒伝六の所蔵となり、大正七年四月同家入札の折、住友家に納められました。
茶入は口造りが厚く、捻り返しは浅いです。
甑は低く肩は撫肩で、むっくりしています。
釉は柿金気色で艶高く、甑際に黒釉がめぐり、流れて胴の中ほどで止まっています。
としきその他の景はないが釉際が厚く溜りをなし、一カ所特に集まって露をなしています。
土は赤白く、糸切は荒めでひっつきが随所にみられます。
『神尾蔵帳』所載のほか、『名物記』 『茶器名物集』などにも記載されており、これらによると箱蓋の書付が小堀権十郎であることがわかります。
また松山青柯著の友』にはさらに詳しい記録があり、当時石黒伝六の所蔵であったことが知られるのです。
【付属物】蓋―二 蓋箱―書付松平不昧筆仕覆―二、伊藤間道・大黒屋金襴(図版右より) 仕覆箱―書付同筆家花櫚、蓋甲凹彫、書付同筆 内箱書付小堀権十郎筆 外箱書付松平不昧筆
【伝来】神尾大和守元陳 松平不昧 同親戚某加州石黒伝六一住友吉左衛門
【寸法】 高さ:7.6 胴径:6.4

名物。
真中古茶入、野田手。
銘は『古今集』物名の部かはなくさ「うばたまの夢になにかはなぐさまんうつsにだにもあかぬこころを」の歌に因みます。
甑際に黒釉がむらむらと巡り、肩先より胴中まで黒釉がなだれているほかには景色がなく、さっぱりした茶入であります。
もと神尾大和守所持、寛政・享和(1789-1804)の頃は松平不昧のもとにありましたが、のち加賀石黒家の蔵となり、さらに住友家に移りました。
(『大正名器鑑』)

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